学生時代に音楽サークルでライブを行う際には
教室や空いているホールなど学内の様々なスペースで
ライブを行っていた
当然のことではあるが
ライブハウスの様な常設のステージがあるわけではないため
ライブの度に
ステージの設営
スピーカーの搬入
配線などが必要となる
我々の音楽サークルでは
入部の際に部員をPA(音響)チームと照明チームの2つに分けていた
各チーム毎に先輩から受け継いだスタッフとしてのステージ作りのノウハウを後輩へと伝えていく仕組みとなっていたのだ
サークルに所属した当時は
スタジオでの練習やライブ出演に価値を見出していたため
こうした裏方業務に強い関心があったわけでもなく
どちらでもよい
などと考えていたが
結果としてRed Colored Gunのメンバーは全員PAチームに所属することとなった
サークルにはPAスタッフも多数いて
ライブの度にそれぞれの担当ステージを決めていたため
自分たちが出演する以外の全てのライブでというわけではなかったものの
サークル仲間のステージを
PAスタッフとしてサポートする一環として
ライブ中の音響バランスの調整に関わったことも少なくなかった
ライブ前のリハーサルで演奏者とともに客席に届くステージの音を作り
お客さんに良い音で音楽を楽しんでもらうこと
同時に演奏者が聞くモニターを調整して
演奏者自身が違和感なくステージで演奏することが出来る音響環境を整えることの2点がPAスタッフの主な役割となるが
お客さんが入ることによってお客さんが音を吸い込んでしまうなど
ライブ中はリハーサルの時点では予測が不可能な部分も少なくないため
ミキサーのバランスを調整して
スタッフとして問題なくリハーサルと同じ音響バランスを作ったつもりでいても
リハーサル中と本番では客席から聞こえるサウンドが大きく変化してしまうことも少なくない
こうした場合に備えてPAスタッフは本番中にも
PA卓と呼ばれる席に座り
細かな音響環境の変化を絶えず意識し
必要であれば本番中にもリアルタイムでミキサーを調整していくこととなる
また演奏者も本番ではリハーサル以上に演奏に力が入ってしまうことも少なくなく
そこから生まれるわずかな音量や音色の違いから
ステージ上で自分たちが出しているサウンドが聞きづらくなり
結果として演奏に支障をきたしてしまうことが少なくない
演奏者がこうした状況に対する焦りから
さらに力んだ演奏をすれば
ステージ上のサウンドはさらなる悪循環に陥ることとなり
バンドのサウンドバランスも完全に崩壊してしまうこととなる
こうした状況ではライブの成功など望むべくもない
こうした状況を避けるために
とりわけライブ開始直後には演奏者の表情を窺い
問題がある場合には
アイコンタクトなどで意思の疎通を図り
本番中にモニターのバランスを微調整することもPAスタッフとしての重要な仕事である
ライブ中に客席から聴いたサウンドのバランスが良く
ライブ終了後に演奏者から演奏しやすい音響環境が保たれていたという声を聞くことが出来たならば
PAスタッフとしての務めが果たせたこととなる
こうした経験をサークル加入直後から繰り返す中で
PAスタッフが調整できることできないこと
バンド自体がステージで出す所謂中音のバランスの大切さ
個々のミュージシャンが求める好みの音は千差万別であること
等学ぶことが非常に多かった
仮に学内でのこうした経験を経ることなく
初めてのステージをライブハウスで経験することになっていたのならば
バンドの音はスタッフと協力して作り上げていくものである
という当然の事すら理解できず
ライブハウスで自分たちのサウンドを作り上げ
お客さんにそのサウンドを届けていく過程で
バンドとして大きな回り道をしなければならなかったかもしれない
また当時のPAスタッフとしての経験がヒントとなり
その後のライブやレコーディングにおいて大胆な音響的な仕掛けを用いたり
またそうした効果の中で初めて意味を持つこととなる楽曲が誕生することにも繋がっていくことになった
学生時代に加入した音楽サークルでは
演奏者として多くのステージを経験するだけでなく
スタッフとしても多くのステージを作り上げていくこととなった
スタッフとしてステージを作り上げる過程では
演奏者としての視点とは真逆の立場からライブを見るという貴重な経験をすることができた
Red Colored Gunのメンバー全員がPAスタッフとしてサークルに所属したことは
今思えば非常に幸運なことだった
学園祭などの学内のライブでは
演奏者としてライブに出演することも本当に楽しかったが
バンドメンバー3人でPA卓に並びサークル仲間が行うライブの
音を作り上げた言わば裏方業務の経験も
今では懐かしい思い出となっている