ベースの中島大介はもとは学内の他の音楽サークルに所属していた
中島は僕や直江から見ると1年先輩にあたる
彼との出会いも、在学中に僕らが所属していた音楽サークルの中での事で
直江とのバンドの結成を決意した直後のタイミングだった
大きなサークルでの上下関係の中で
当時2年だった彼は
ライブの機会がないだけでなく
スタジオでの練習時間を取ることさえ出来ず
その事を不満に思い
自由な小さなサークルに移籍しようかと
その日我々の部室まで様子を見に来ていたのだ
バンドメンバーを探していた僕や直江からすれば渡りに船といったタイミングで
さっそく三人でスタジオに入った
それまで何度かスタジオに入り
いくつかのコピー曲のレパートリーを持っていた僕と直江の二人は
いつものようにコピー曲の合間にオリジナル楽曲のモチーフやアドリブのリフを弾き演奏していたのだが
驚くことに中島はあっという間に僕らのサウンドの中に入り込んできた
コピー曲であろうが
楽曲のモチーフであろうが
驚くべき音感、耳の良さ、センスを持ち合わせているため
瞬時に曲を覚え
次の瞬間には自らのベースラインをアドリブのフレーズに発展させ
僕らのサウンドに溶け込んできたのだ
頭の中には
印象的なギターリフ
シャウトするボーカル
激しいドラミング
そしてその合間を縫うような自由なベースフレーズをもつ
オリジナル作品を演奏するバンドのイメージが浮かんでいた
僕らは正式にベーシストとして中島大介へバンドへの加入を依頼し
バンドのメンバーが揃った
